宇治拾遺物語 - オンライン読書
宇治拾遺物語 - 064 式部大輔実重賀茂の御正体拝み見る事
これも今は昔式部大夫実重は賀茂へ参る事ならびなき者なり。前生の運疎かにして身に過ぎたる利生に預らず。人の夢に大明神。また実重来たり。云ふやうは。とて歎かせおはします由見けり。
実重御本地を見奉るべき由祈り申すにある夜下の御社に通夜したる夜上へ参る間半木の辺にて行幸にあひ奉る。百官供奉常の如し。実重片薮に隠れ居て見れば鳳輦の中に金泥の経一巻おはしましたり。その外題に。
一称南無仏
皆已成仏道
と書かれたり。夢即ち覚めぬとぞ。
宇治拾遺物語 - 065 智海法印癩人と法談の事