宇治拾遺物語 - オンライン読書
宇治拾遺物語 - 073 範久阿闍梨西方を後にせざる事
これも今は昔範久阿闍梨といふ僧ありけり。山の楞厳院に住みけり。ひとへに極楽を願ふ。行住座臥西方を後にせず。唾大小便西に向はず。入日を背に負はず。西坂より山へ登る時は身をそばだてて歩む。常に曰く。仆るる事必ず傾く方にあり。心を西方に懸けんに何んぞ心ざしを遂げざらん。臨終正念疑はず。となん云ひける。往生伝に入るとか。
宇治拾遺物語 - 074 陪従家綱行綱互に謀りたる事