宇治拾遺物語 - 098 式成源満則員等三人滝口弓芸を被る事

これも今は昔鳥羽院位の御時白河院の武者所の中に宮道の式成源の満則員殊に的弓の上手なりとその時聞えありて鳥羽の院位の御時の滝口に三人ながら召されぬ。試みあるに大かた一度もはづさず。これをもてなし興ぜさせ給ふ。
ある時三尺五寸の的を給びて。これが第二の黒目射落して持て参られよ。と仰せあり。
巳の時に給はりて未の時に射落して参られり。平題箭三人の中に三手なり。矢とりて矢取の帰らんを持たば程経ぬべし。とて残りの輩我と矢を走り立ちてとりどりして立ち代り立ち代り射るほどに未の時の半らばかりに第二の黒目を射めぐらして射落して持て参れりけり。これ既に養由が如し。と時の人誉め喧騒りけるとかや。