宇治拾遺物語 - オンライン読書
宇治拾遺物語 - 149 貫之歌の事
今は昔貫之が土佐守になりて下りてありけるほどに任はての年七つ八つばかりの子のえも云はずをかしげなるを限りなく愛しうしけるがとかく煩ひて亡せにければ泣き惑ひて病づくばかり思こがるるほどに月此になりぬれば。かくてのみあるべき事かは。上りなん。と思ふに。児の此処にて何とありしはや。など思ひ出でられていみじう悲しかりければ柱に書き付けける。
都へと思ふに付けて悲しきは帰らぬ人のあればなりけり
と書き付けたりける歌なん今までありける。
宇治拾遺物語 - 150 河原院に融公の霊住む事