宇治拾遺物語 - オンライン読書
宇治拾遺物語 - 146 季直少将歌の事
今は昔季直少将といふ人ありけり。病つきて後少し癒りて内に参りたりけり。公忠の弁の掃部助にて蔵人なりけるこの事なり。乱り心地まだよくも癒り侍らねども心もとなくて参り侍りつる。後は知らねどかくまで侍れば明後日ばかりにまた参り侍らん。よきに申させ給へ。とて罷り出でぬ。
三日ばかりありて少将のもとより。
悔しくぞ後に逢はんと契ける今日を限りと云はましものを
さてその日亡せにけり。哀れなる事のさまなり。
宇治拾遺物語 - 147 樵夫の小童隠題の歌詠む事