宇治拾遺物語 - オンライン読書
宇治拾遺物語 - 147 樵夫の小童隠題の歌詠む事
今は昔隠題をいみじく興ぜさせ給ひける御門の篳篥を詠ませられけるに人々悪ろく詠みたりたりけるに木伐る童の暁山へ行くとて云ひける。この比篳篥を詠ませさせ給ふなるを人のえ詠み給はざんなる。童こそ詠みたれ。と云ひければ具して行く童部。あな負気なき事云ひそ。さまにも似ずいまいまし。と云ひければ。何どか必ずさまに似ることか。とて。
めぐり来る春々毎に桜花いくたびちりき人に問はばや
と云ひたりける。様にも似ず思ひがけずぞ。
宇治拾遺物語 - 148 高忠の侍歌詠む事